電子書籍化の話がiPadの発売を皮切りに色々出てきましたが、元某出版社の編集だった私がちょっと出版社に取って耳の痛い話をしようかと思います。
さて、現在電子書籍に関しての一番の注目点としては、「一体いくらが適正価格なんだ?」っていうところに尽きるかと思います。
その際、まず前提となるのが、「この本ってナンボ金がかかってんの?」って言うところでしょう。
一番気になるところの癖に、一番分かり難い部分でもある、この「いくらで本が出来るんだろう」って言うのを細かく分解していきます。
まず、1冊の本が出来るまで出版社が支払う項目を見てみます。
・著者への印税報酬
・編集・デザイン
・印刷費
・取次への委託
・POP等の広告宣伝費
まぁ、印税や編集デザイン、印刷費などは説明しなくてもわかるかと思いますが、取次への委託は少々分かり難いですし、良く無視されがちな出版社自体の人件費や雑費も本来が考えなければなりません。
とはいえ、そこまで考えていくと計算が複雑化しますので、今回は外部への支払を見ていこうと思います。
さて、一般的に書籍と行っても、小説もあり、漫画もあり、技術書もあり、一般書もあるわけですが、今回は一般的な一般書っていう奴でお話をしてみようと思います。
その際、ある程度仕様を決め打ちしていかなければならないので、以下の様に企画してみました。
サイズ :新書版(新書版 103X182)
カラー :本文モノクロ・カバー4色・帯2色
ページ数:224ページ
価 格:1,200円
初回部数:5,000部
■まずはライティングから編集、デザインまで
まず、ライター(著者)さんへの印税報酬ですが、通常一般書に限らず、8%程度が通例となっていますので(中にはもっとややこしい計算方式で印税を下げる出版社もいますが)、以下の様な計算となります。
1,200円(書籍定価)×8%(印税率)×初回部数
この段階で、著者さんへの支払として外部に持ち出しが発生しますが、これは書籍が発行された月から約2ヶ月後の支払が通例となっています。
次に編集・デザインワークへの支払となりますが、内部でやれば基本持ち出しはありませんが、今回は外部委託として考えて行こうと思います。
その場合、ページ単価で編集デザインを受ける編集会社が多いと思いますので、「一体いくらで編集をして貰うか?」というのがキモとなってきます。
この場合、レイアウトが複雑なモノや、本の大きさ(範型)が大きいものはページ単価としても値段が上がりますが、今回は一般書ということで、レイアウトも縦組みということでそれほどレイアウトも複雑ではないだろうと予想出来ますので、ページ単価は3,500円とさせて頂きます(これは本の内容や編集会社の地位などでも結構変動しますので確定的な数字を出すのは難しいですが、まぁ最近は書籍の編集単価が下がっているので、まぁこんなもんでしょ)。
また、装丁デザインという項目も出てきます。
これは装丁、つまりカバー周りのデザインとページの基本デザインを別項目として請求擦るモノですが、これもピンキリですが、大概どんぶり勘定で100,000円〜200,000円程度だろうと思います(これも有名なデザイナーに装丁を頼むと高く尽きますが、今回はあくまで基本的な値段とさせて頂きます)。
ということで、以下の様な計算が出てきます。
224(ページ数)×3,500円(編集デザイン単価)+150,000円
■印刷・取次まで
次に印刷と取次までの値段を見ていきます。
まず、印刷費ですが、本文モノクロの新書版で初回部数が5,000部ということで、私が出版社にいた時に取って貰った見積もりを参考にしますが、おおよそ700,000円から900,000円程度だったと思います。
無論、紙をおごったり、表紙に特殊印刷をしたりと行ったことをやるとどんどん単価が上がりますが、ここではベーシックな書籍として考えているので、こんなもんでしょう。今回は間を取って800,000円と設定します。
次に、本が出来たからといってもすぐに書店に並ぶわけでなく、取次という一般的な擁護で言えば小売りに通さないと書籍は売れませんし、並ぶことも出来ません。
その際、出版コード、書籍コードといったモノを本に添付するわけですが、まぁこれは話がそれそうなので割愛させて頂きます。
さて、その取次に本を流して貰う際、仕切値が重要になってきます。
現在ある出版社の多くの仕切値ですが、65〜67%程度となっているようで、ただしその出版社が古ければ古いほど仕切値も上がります。
これは、昔は出版社自体が少なかったということで仕切値が高かったのが出版社が多くなり、取次も新しく参入する出版社に関しては仕切値を下げる傾向があると言えます。余談ですが、今から出版社を起こすぞ!!って息巻いて取次に口座を開設して貰おうとしても多分相当低い仕切値になってしまい、事実上あまり儲かる出版社にはならないという事でもあったりします。
さて、今回取次に卸す仕切値は切りの良い70%(相当高い数字と言えますけどね)で計算して見ましょう。
1,200円(書籍定価)×0.3(取次仕切値)×初版部数
さて、これであらかたの数字が出そろったので、書籍一冊当たりのコストを割り出してみることにします。
本一冊当たりのコスト
以下の様に各コストを算出しました。
印税 :480,000円
編集・デザイン:934,000円
印刷費 :800,000円
取次支払 :1800,000円
合計 :4,014,000円
次に一冊当たりのコストを割り出すので、コストを本の部数で割ってあげます。
4,014,000円(総コスト)÷5000部(初版部数)
1冊当たりのコストが802,8円となり、1冊当たりの利益は書籍定価からコストを引けば自ずと出てきます。
1,200円(書籍定価)−802,8円(コスト)
はい、これで1冊当たりの利益は397.2円となり、出版をやっている人が見ればわかりますが、相当高コストの書籍で、実際問題これじゃ全く利益になりません。
無論、一発当たりが出れば話は変わりますが、一般書というジャンルは基本ハイリスク・ローリターンと認識すべきでしょう。
ちなみに5,000部全部完売した場合の総利益は、総売上からコストを引いて上げればわかります。
6000,000円(総売上)-4,014,000円(総コスト)
これで利益は1,986,000円となります。
まぁ、通常一般書の初版部数は1万部程度が割と普通なので、今回みたいに5,000部というのは結構自信なさげな本といえるかも知れません。
さて、次は電子書籍の話になりますが、話が長くなったので一端切らせて頂き、その2でお話しようと思います。
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